優しい雨

母との約束の日、私は灰色の空から降り注ぐ細い雨をガラス越しに眺めながら、修一を独りにして外出することを躊躇していた。

修一が家に居る様になってから、買い物や一寸した用事で一時間程度は出掛けることはあったが、その日のように半日以上留守にすることはなかった。

私は修一があまり反応しないだろうことは承知で、叔母が入院していること、母に一緒に見舞いに行って欲しいと言われた事を話した。

すると珍しく修一は布団から顔を出して、私の話を聞いてくれた。

「今日のお昼過ぎに母と待ち合わせて、午後いっぱいくらいは掛かってしまうと思うけど、出掛けても大丈夫?」

私が尋ねると、修一は微かだが口元に笑みを浮かべて

「行ってらっしゃい」

と言ってくれた。