美しい白銀の髪を風に遊ばせながら、どこか遠い目をし、夕凪は呟いた。



「夢をみた…………琥珀と初めて会った時の」

「うん。で、探しに行くんだろ?琥珀姫を」

「ああ。オレの花嫁だからな」

「人と、人じゃないものが一緒になってはいけない――暗黙のルールを、主様は破っちゃったからねぇ」



面白そうに言う草可と対照的に夕凪は表情を変える事なく、大樹の枝から下に飛び降り水が音を立てる。



「ここをちょっとの間離れる、だから――」

「留守を任せる、でしょ?大丈夫だよ、おれは強いからね〜」

「べつにおまえの心配はしてない」

「ひっど〜」



草可は軽く受け流す。こんなのは日常茶飯事で、これが二人にとっては普通だった。



夕凪が腰の黒帯に差してある扇をゆっくり広げる。琥珀姫の色でもあり、夕凪の色でもある、琥珀の扇。



「琥珀の扇が指し示す方角へ我を導きたまえ」



そう唱えると夕凪は光の粒子になりその場から消えた。