沈めた意識と共に身体も浮上し、草可の身体は水の上をぷかぷかと漂う。



「夢、か。それもそうか、僕が彼女を殺したんだから」



さらっとそんな事を自嘲気味に呟く。もう過ぎ去った過去の出来事で、今も時々彼女の面影を夢に見る。



綺麗なままの姿で。



「できればもう、見たくないんだけど。本当……嫌になるよ」



何一つ穢れのない綺麗な思い出のまま、彼女は草可の中に残っている。それが草可の心にいつまでも影を落とす。






“……後悔なんてしないよ。草可が、好きだから”






彼女は絶対責めない。それが、彼女だった。



「一度でも僕を軽蔑してくれたら、よかったのにねぇ……」



草可が寂しそうにへらっと笑い、それからひょいと大樹の枝に跳ぶ。その直後、上から何かが降ってきたかと思うとそのまま水の中にドボーンと音を立てて落ちた。