パンッ!!



その音と共に一斉に走り出した。



うわぁ…
私達のチーム、1位やん。

すごい…!!



どんどんとバトンパスが行われて行く。


そして、私はふと横からの視線に気づいた。



その方向を向くと…


鈴ちゃんがいた。



鈴ちゃんは私を睨み付けると前を向いた。


「風岡先輩は券もらってましたよね。なら、美緒お姉ちゃんなんかに券は渡さないよ。」


低く、落ち着いた余裕のある声だった。



すると…



「あぁ!!美緒ちゃん、どうしよう、あれ!」

前の同じチームの子が声を上げた。


見ると、さっきの私にアンカーを押し付けた子が、力なく走っていた。


そのせいで1位だったのに、どんどん抜かされて、今は6位。



…なんで?


端から見てもやる気がない様にしか見えない。


わざとや…。


すると横でクスッと笑う声が聞こえた。


「やだぁ。美緒お姉ちゃんってばとぼけちゃってさぁ。」


まさか…



「私とあの子で手を組んでるの。だから勝てっこないよー。」


そう言って笑う鈴ちゃん。

ほんと、おばさんにそっくりやね…鈴ちゃん。


性格悪すぎやん。




しばらくすると、5位のバトンが回ってきた。


「仲本さん!よろしくっ!!」


力強く渡されたバトン。


なんとしても3位以上に入らな!



私は猛ダッシュで走り出した。


最初から全力疾走なんてアンカーがすることやないけど、それしかなかった。


最後で追い上げるなんて啓みたいにかっこいい事でけへんよ。


やから、私は私のやり方で勝ったる!!


だから、走り終わったら啓に褒めてもらお!



もうその事ばっかりで無我夢中で走った。