「おい、早く立て」 低い声に恐る恐る目を開けると、視界は白。 「ぇ、」 緊張に止まった呼吸を吐き出し、ゆっくりと体を離す。 どうやら誰かに支えてもらったようだ。 「ぁ、りがと」 視線を上げて顔を窺う。 艶やかな黒髪。 端正な顔立ち。 長く、逞しい手足に、均整のとれた体。 まさに大人を匂わせる男だった。