お皿も底が見えて来て、成巳先輩のカクテルもあと少ししかグラスに入っていない。
このまま、時が止まればいいのに。
あたしは思った。
「成巳達って本当に付き合ってんの?」
けれどそんな奏さんの言葉に我に返る。
「いや、コイツは俺のバイト友達。」
そう、だよ。
「やっぱし?
まぁ、あんな綺麗な人を捨てる男なんて居ねぇよな。」
「…ああ」
綺麗な人…
奏さんが拭いていたたグラスにあたしの顔が写る。
綺麗じゃないもんね…
あたしは童顔なんだ。
何だかそう思うと胸が苦しくなるのが分かった。
あたしは綺麗じゃない。
成巳先輩が好きなのは綺麗な人。
成巳先輩の彼女は綺麗な人。
あたしに勝ち目なんてない。
綺麗じゃないから。
顔が子供だから…
「あの!
あたしっ、帰りますねっ!!」
あたしはカウンターに千円札を置き、ダッシュでお店を後にした。
泣いちゃだめだ!
思ってはいるけど、目頭はドンドン熱くなる。
ヤメテよ…
泣かないでよ…
お願い
お願い……