まだこの教会に人が訪れていた頃、オレはピアノ教室に通っていた。

そこそこの腕前で、コンクールに入賞したり、新聞や雑誌に小さくだが取り上げられたりしていた。

そのことをおもしろく思わなかった連中がいた。

それが今、床に倒れているヤツらだった。

コイツらは一緒になって、オレの指を…使い物にさせなくした。

教会には立派なグランドピアノがあって、時々使わせてもらっていた。

あの日、コイツらにピアノを弾いてくれと頼まれたオレは、素直に弾いて聞かせた。

コイツらがオレを囲むようにして、大人達が離れている隙に…蓋を思いっきり落とし、オレの指を潰した。

何本かの指は折れて、変形してしまった。

そして筋を痛め、今でも上手く動かせない。

コイツらは大人達に、ワザとじゃないと訴えた。

たまたま、偶然だったと―。

そして大人達はそれを信じてしまった。