でも気にせず踊り続けていると、その客はステージに近付いてきて…

次の瞬間…!

何を血迷ったのか、その客はいきなりステージに上がり私の手首をガシッ!と掴んだ。


…人間はホントにビックリすると、案外声が出ないようだ。


叫ぶとか、逃げるとか…まず第一にどうしたらいいのかわからない。


頭がついてかない。
状況を理解できない。


……だけど。

この手を知ってる。

この手加減なしの力で握ってくる手を、この温もりを、この圧倒される威圧感を…知ってる。


頭が理解するより早く、口が勝手に


「……社長…。」

と呼んでいた。