しかし、しばらくすると、ほんのりとした甘い香りに誘われ、体を起こしてそれを啜る。



部屋にはラジオの声と、ホットミルクの香り。


そして僕らがカップを啜る音。



ちなみにこのマグカップは、小6の時に行った焼き物教室で、お互いのために作り合った物だ。


時々、僕らはこれを使う。


家に親がいない時に。



ちさとのカップには、何とかレンジャーに出てきそうな、怪獣の絵柄。


そして僕のカップには、うさぎの絵柄と"そーちゃん"という文字が書いてあり、

それがちさとに見えるような角度にしながら飲む。



「…久しぶりだね、これ使うの」



そう言って、ちさとは赤くなった瞳を緩める。


当時は僕の作ったカップが"可愛くない"と怒られ喧嘩になったものだが、

思い出が美化されたのか、ちさとが少し大人になったのか。



「そーちゃんに似てるよね」


と怪獣の絵をこちらに見せながら、緩んでいた顔で更にはにかんだ。



言っておくけど、僕の口はそんな大きくないし、目も釣りあがってなければ背中にとさかも生えてない。



カップを啜りながら、手の甲で、ちさとの頭を軽く叩いた。