普段以上に靴紐をきつく結ぶ。


靴擦れを起こさないよう靴下は履いた。


そうして玄関から1メートルほど小走りで行ったり来たりする。


不備はない。






「…ふ―――…」




そこでようやく一息ついて、僕は空を見上げた。



広がるのは、オレンジと深い青が混在した空。


そして、きらきら輝き始める一番星。


…ふと、あの日のことを思い出す。



ちさとと髪を洗いっこしたこと。


ちさととキスをしたこと。



太陽が沈み人工光が水面を反射するのが、何故かこそばゆく思えたあの日。



あれは、いつの事だっけか?


今の僕には遠すぎて、思い出すことができない。



昨日か、去年か、もう何年も前の事か?


本当に、いつの事だったんだっけ。



……ん?