バスタオルで耳の中に入り込んだ水まで吸い取る。


ドライヤーで髪の水分を飛ばす。


そうして、余計な重みを少しでもなくす。



服装はジャージ―――の予定だったが、抵抗される事を考え生地が固めのジーンズに変更。


脚に致命傷を負ったら全ての終わりだからだ。


まあ、気休め程度だけど。


上は、腕の伸縮活動を最大限に尊重してくれる半袖のTシャツのみ。


色は黒。


今更気づいたけど前髪が少し邪魔だったかもしれない。


鏡を見る。ああやっぱり。


でも時間が無い。仕方ない、このままだ。不安になってきた。


――落ち着け。



最大の問題は武器である。


冷水を浴びながらあれこれ思案していたけど、イマイチ使い易い物が浮かばない。


刃物はよほど使い慣れていないと自分にまで危機が及ぶ。


大体、薄暗いとはいえまだ夕方である。人目も気になる。


花瓶のような使い捨ても避けたい(というか外で持ち歩くと刃物並みに怪しい)。



迫り来る時間の中、結局手に取ったのが革製の学生鞄。


何とも間抜けな。いやでも仕方ない。


というか、この限られたと思い込んでる時間さえも杞憂になり得るんだよな。


ああもう落ち着け。頼むから落ち着け。