殺(や)るとしたら今晩だ。



殺したはずの新山ちさとが生き返った。


公園に放置したはずの死体は消えた。


殺し損ねたか、死体が徘徊しているか、それともあの日の事が悪夢だったのか。



いや、全て当てはまらないという事が、既に立証されている。



刃先に残った血痕、背を何度も刺した時の肉が抉れる感触が、

決して妄想に留まる事がないと語っている。



もし、ふとあの日の事を思い出し、通報でもされてしまったら。


…いやいや、証拠はないのだから、どうしようも無いはずなのだけれど。


いやでも、何が起こっているのかわからない。


ちさとが何を考えているのかわからない。


何が起きてもおかしくはない。


念には念を。



というか、こういう事にこの言い回しは当てはまるのか?


…いやいや、そんな事よりも。



ちさとは先に着替えを終え、待ち合わせごっこをすると言って例の公園へと飛び出した。


こんなチャンスはあるだろうか。


いや、ない。



もう一度、もう一度。


落ち着け、落ち着け、落ち着け、自分。



心を無にして、さあもう一度鬼になろう。


最後までやり遂げよう。





この道を選んだのは自分なのだから。