誰がここに座って先生の演奏を聴いていたんだろう。 わかっていたけれど認めたくなかった。 「先生… いつもそのショパンを弾いているんですね」 アタシは先生に言う。 「昔からこの曲をよく弾いていたからクセのようなものかもな」 そう答えながら先生は目を閉じて曲を弾き続ける。 よく弾いていたのはきっとこの曲を好きな人がいて。 その人のために弾いていたんだろう。