小野先生とアタシ


先生はその側にあった椅子を指差して

「聴くのならそこに座りなさい」

そう言った。



「…聴いててもいいんですか…?」

そんな先生の言葉に思わずアタシは少し驚いて聞き返す。



「さっきまで聴いてたんだろ?」

先生はピアノに立てかけていた譜面をめくりながら言う。



アタシは先生のそんな仕草を見ながら先生の指差した椅子に座る。


この椅子…。

アタシが座る前は誰が座っていたんだろう。