「土屋さん、着いたよ。土屋さん。」


何度呼び掛けても返事は帰ってこない。



仕方なく美香のカバンを探り、家の鍵らしきものを見つけ、中に入った。



ベッドに着き、ドサッと美香を寝かせ、帰ろうとすると



「行かないで…。」



まだ夢の中の様だが、必死に松山のシャツの裾を引っ張った。



「お願い…置いていかないで…。」


涙を流して懇願する美香に、松山は仕方なくもう少しだけそこにいることにした。



じっと美香の顔を見つめる松山。



いけないと分かっていても、体が言うことを聞かない。



そっと髪を触り、頭を撫でる。


柔らかな茶色い髪は、すごく触り心地がよい。



頬を撫でると、くすぐったそうに動く。



松山は、気がつくと美香のそばで寝てしまっていた。