更衣室に着くと、もうみんな帰ってしまったのか、ほんど人がいなかった。



茜と二人でのんびり着替えていると、隣から声をかけられた。



「美香ちゃん?土屋美香ちゃんでしょ?」



振り向くと、話しかけてきたのは滝玲子ちゃんだと気がついた。




「いつも演技上手いな~って思ってたんだぁ。あたしは大道具専門なんだけど、そんなあたしから見てもすごいなって思うよ。」



玲子ちゃんは、明るい笑顔を振りまいて褒めてくれた。



玲子ちゃんは、黒髪のセミロングで、少しつり目のとても可愛い女の子。


誰とでも打ち解けて話すことができて、いつも笑顔で明るい感じ。



水色が似合う感じで結構さっぱりしてて、モテるだろうな~っていつも思ってた。



そして、松山君が好きかもしれない相手でもある。



こういう子がタイプなんだ。



へ~。




「玲子ちゃんも大道具頑張ってるよね。結構大変じゃない?」


「まぁね。でも少しずつ舞台が出来上がっていくのって、わくわくするよ。なんかこう、自分達の手で世界つくり出してるって感じで。」


「そうなんだ~。そういえば、松山君と仲良いよね。」



「あ、うん。同じ高校だったし。赤星誘ったのもあたしなんだ。」



同じ高校か~。


だから最初から仲良かったのか。


「じゃ、うちらもう行くね。またね、美香ちゃん、茜ちゃん。」


「うん、気をつけてね。」


玲子ちゃんは友達と一緒に更衣室を出ていった。



「……玲子って絶対Sだよね。」


さっきから一言も発していなかった茜がいきなりこう言った。



「え?なんで?」


「なんとなく…。」



変なの。



その意味深な言葉を理解するのは、それから数日後のことだった。