それから宮崎先生と話し込んでしまい、たいして休むことなく鐘が鳴った。
あらと時計を確認した先生は、立ち上がって私の様子を見る。


「もう大丈夫よね?まぁ今までずっと話してたんだし」

「えっと、なんかすいませんでした。ずっと付き合ってもらっちゃって……」

「いいのいいの。うちの保健室っていつもこんなカンジだから」


そう言って笑う宮崎先生に軽くお辞儀すると、膝にかけた布団を取り、靴を履く。
久しぶりにたくさん話したこともあって、今はすっきりした気分だ。


「またいつでもいらっしゃい。特に理由はなくてもいいし、仮病を使ってきてもいいし、男の子を連れてきてもいいわよ」

「えっ、えっと」


急に何を言い出すんだろう!
そ、それに先生の発言としてどうなんだろうなんて思いながら、なんだか恥ずかしくなって顔が熱くなる。
きっと赤くなってる……。
そう思うと顔は上げられないし、どう答えていいかもわからず言い淀んでいると、先生は小さく声を出して笑う。


「小鳥遊さん、初心なのねぇ」


可愛い可愛いと笑う先生に、私はさらに顔が赤くなるのを感じて俯く。
先生、ちょっといじわるだなぁ。
そんなことを思っていると、先生は私の髪を梳き始める。
え……っと………?

「あと、身だしなみには気をつけましょう?」

「――――っ!」


そういえば、村井君に髪をめちゃくちゃにされたのを思い出した。
私、今までずっとボサボサの頭のまま先生と話してたんだ!


「あっ、あの、ありがとうございました!」


声が上ずったけどそんなこと気にしてられないっ。
これ以上ないほど真っ赤になった顔を見られるのが恥ずかしくて、私は頭を下げるとそのまま小走りに教室へ戻っていった。
ちょっとどころじゃなく、すごくいじわるな人だ。
走る背中から、先生の小さな笑い声が聞こえた気がした。