『武田くん!
この子が私の友達の真里だから!』
『あっ、よろしくね!』
そう明るい声で彼は言った。
『…よろしくね』
私は明るく振る舞えない。
うまく笑えないよ。
『…真里?どうしたの?』
菜々子が不思議そうに
見つめる。
『…幸は…』
その言葉が菜々子の口から
飛び出たとたん、
私はまた走り去った。
…もう聞きたくない。
全て忘れてしまいたい。
…私は
こんなに幸のことを
想っていたのに
…幸は
私のことなんて
どうでもよかったんだね。
…分かってたよ。
でもやっぱり…
『辛いよ…』
この傷が癒えるまでに
どのくらいの時間が
かかるんだろう。
とそのとき。