怖いわぁ、と小声をもらしながらも烏丸の表情は変わらない。相変わらず気味の悪い奴だ、と心中で吐き捨てながら侘助はテーブルから脚を下ろし、傍らのバッグを手に取った。


「あれ、もう行っちゃうん?」


「オマエと顔突き合わせてると胸くそ悪いんだよ」


「そんな言葉遣いしたらコレッティに叱られるでぇ」


「……死ね」


パンッ。


小さな破裂音と同時に烏丸の背後にあった花瓶が砕ける。そして烏丸自身のこめかみの横、銀髪がはらりと散った。


「イヤやなぁ、ちょっとからかっただけやん。侘助はすーぐ本気になるぅ」


銃弾が顔の横を掠めたのにも関わらず顔色も変えずに薄笑いを浮かべている。


避けられた、と侘助は思う。自分は本気で彼の耳を吹き飛ばしてやるつもりだったのだ。なのに一瞬で。


「本っ当にムカつく」


心の底からそう呟いて、侘助はツカツカと毛足の長い絨毯の上を歩いて居間から立ち去った。


後に残された烏丸は、やがてその軽薄な笑みをすっと引っ込めて真顔になる。先程までの穏やかな空気とは正反対のオーラを醸し出し、鋭い眼光を侘助が消えた扉へと向けていた……。