記憶 ―夢幻の森―



忘れかけていた、
遥か遠い記憶、感覚…。


俺の小さな胸の中で、
小さな心臓が、

いつもと違う、
静かな鼓動を生み出す。


やめてくれよ…


男だの女だの、
愛だの、何だの…

とっくの昔に、
俺は捨てたんだ…。

何を今さら。



ハルカの笑顔を守りたい。


でも、それは、

アズやアイリに対して向けられた感情と、同じだろう…?


「親心」――…


それ以外の感情なんて、

俺に、
それ以上の感情なんて…



「…分からないな…」

俺は空を仰いだ。


雲一つない空から、泉に降り注ぐ月の明かり。

月光浴…?

身を清める泉、か…。
効果は充分にありそうだ。


泉の精よ、

俺のこの心までも清めてくれ…


無邪気な声を耳にしながら、俺はそんな事を考えていた。