きょとん、と俺はハルカの背中を見つめた。
「…?…泉の精が言ってただろう?裸で身を清めろ、と…」
「…嘘。裸?それ、あたしも?」
「そうだ。」
どうもハルカは人の話を聞かないくせがある。
泉に背を向け、何やら叫ぶハルカをそのままに、
「コン!行くぞ!」
俺は地面で伏せるコンの体を、ひょいと無理矢理持ち上げた。
『んあぁぁ!?なッ何すんだぁ!バカぁー!!』
じたばたと、暴れるコンを宙に上げ、そろりと泉へと足を進めた。
意外と水は冷たくもなく、むしろ慣れれば温かさすら少し感じる程だった。
俺が胸まで浸かると、両手で持ち上げているコンの尻尾が水面に触れた。
『ぴぎゃッ!!わぁあぁん…!離せよぉ!』
「お前、離したら翼で飛んで逃げるだろう?」
『うんッ!』
涙目でコクリと頷く。
一つ溜め息をつくと、俺はコンを睨んだ。
「…少し、我儘が過ぎるようだな?…俺を、怒らせたいのか…?」
『え……』
俺が、ふふふ…と笑いを浮かべ見つめると、コンは急に諦めた。
『それ、もっとコワイなぁ?…多分。』
頑張って反らしていた尻尾から、水面へ…。
『…ゆ、ゆっくりなぁ!?』
ようやく覚悟を決めたようだった。