記憶 ―夢幻の森―



扉の向こうは、
ただただ白い世界…。


…ここは?


俺の両足がその地を踏みしめると、


――ギィィ…

と同じ音がした。


はっと振り返ると扉はすでにそこにはなく、ただ目の前は白い。

上下左右…、
全ての白が俺を包む。
前も後ろも分からない。


帰り道はなくなった。
もう後戻りは出来ないだろう。


やはり進むんじゃなかった。

俺は不安と後悔に襲われ、眉間にしわを寄せて周囲を見回した。


首を後ろへひねった先に、仲良く手を繋ぎ俺を笑顔で見つめる幼い2人。

彼らを見つけた途端、俺の心は落ち着きを取り戻した。


進むしか…
ないようだな…。


…進む…?
どっちへ……?


それは、
あの2人が知っていた。



『『キース~…!』』

視界の先で2人が俺を呼ぶ。
俺は彼らを頼りに歩いた。



『は~や~く~ぅ。』

「あぁ…分かったよ。」

こんな状況にもかかわらず、受け答える度に笑みがもれる。


「…まだ歩くのか?」

歩いているはずだ。
結構歩いたはずだ。
しかし、世界は変わらない。

…進んでいるのか…?