「森の主は、大人には教えないと言ったのか…。牧師の私でさえ許されないだろうか…」

セイジさんが、食事の途中でそう聞いた。


「おそらく。少年少女だけ、と言ってましたから…」

『パパ、インチキだから無理だッ!』

床で自分も食事を噛みながら、テーブルを見上げてコンが鳴いた。

ハルカがコンを叱るだろうと待っていたが、元気のないハルカはそんな素振りも見せない。


「…セイジさんは待っていて下さい。俺が行って来るから…。」

「しかしっ…!」

「予言の男の子も言っていたのでしょう?救う、と。」

俺がそう言うと、セイジさんもユリネさんも目を伏せた。


「…その話は、忘れてくれないかな?確かに真実だが、ここでこうやって皆で食事しているだけで充分なんだよ?」

「そうよ?キースちゃん。ごめんね、変な話を聞かせて…」

「いや…」

違うんだ。
それじゃ、駄目なんだ。
何も変わらない…。


「そうだよ!キース!あたしの為に危ない事しないで?」

ハルカが横から俺の袖を引っ張った。

俺は首を横に振る。


「なんで、そこまでしてくれるの…?」

そのハルカの問いに対する俺の答えを、皆が待っていた。