記憶 ―夢幻の森―


壁…、だよな?

そう恐る恐る、躊躇う指先で岩に触れてみる。
固さを、確認出来る。

すり抜けれるはずがない。

そう両手のひらで岩を確認している時だった。


壁が光を放ち始めた。

光は、ぼんやりと光を強めながら、壁にいくつもの線を描く。

まるで…

――…扉…?


なぜ…

俺の見つめる『それ』は、強い光を発しながら


――ギィィ…


そう音をたて、
開いた…。


なぜ…

こんなものが存在するのか。
俺の夢の中に…

なぜ…
記憶にない、彼らの言葉があるのか。
俺の意識の中に…


なぜ…

彼らは導くのか…

他の何者でもなく、
なぜ、彼らなのか…


何者かの罠なのか?
俺をこの世で目覚めさせようというのか?



『『キースぅ~…!』』


彼らに、そうせがまれたら…

…困ったな。


いずれにせよ、

――…断れないじゃないか……


俺は後ろを振り返る。

やはり静寂。
懐かしき世界。


…どうする?


ひとつ溜め息をつくと、
意を決して、
足を扉へと進めた。


もしかしたら…、

もう戻ってこれないかもしれない、この偽物の世界に…

後ろ髪を引かれながら……