エマはハルカに向かって穏やかに、優しく言葉を掛けた。

ハルカに、
分かるだろうか…?



「…やっぱり、忘れちゃうって事…?」

「そうね…。」


「そっか…」

ハルカはうつ向いて、唇を噛み締めた。


やっぱり、
そうなんだな…。

俺もどこかで期待していたのかもしれない。
ひどく、心が沈んだ。



「…想い出は、忘れてしまうから大事なのよ。」

「…?」


そうかもしれないな…。

首を傾げるハルカの横で、
俺は目を細めて彼女のあどけない表情を見つめる。


「キース君がこの世界へ来て、貴女たちと出逢って過ごして…。昔の事を少しずつ忘れてしまった様に…ね。」

「……ぇ…。」

俺は驚いて、その目をエマへ向けた。

――忘れていない。

そう首を傾げる。


「…ふふっ。少しずつ穏やかに…、忘れていってるわよ?気付かないかしら。」


俺はエマの言葉に誘導されて、
頭の中で…、
記憶を、探っていった。

アズ、アイリ、アラン。

レンに、ラオウに、タビ…
リオン…、リフィル様、カルラ様…



「…貴方は昨日、狼たちの言葉が分からなかった…。元狼なのに、ね。」

「――…ぁ。」

あぁ…
それで、か…?