16・花の名前


石柱から続く地面は平坦で、急に視界がひらけた。
ここが頂上なのだと分かる。

紺色の暗い空に、
大きな白い惑星が、二つ。

あまりの神々しさに、
威圧感に目を奪われる。


「…コン!?」

視界を下へ戻し、黒い小さな彼の姿を探す。


地面は、
柔らかな光で溢れていた。

先程からちらほらと見掛けていた光る石が、砂利の様に敷き詰められており、

青、緑、白…
そして、赤…、

まるで、あの花畑の様に。

しかし、
人が意図的に造った場所なのだと推測出来た。


二つの惑星に照らされた、
神秘的な地面の中心に、

彼は、居た。


ウゥゥ…!!
『…お前が、オオカミに命令したんだなッ!!』

コンの威嚇する視界の先には、白い霧が立ち込める。

その向こうで、
蠢く大きな影が、


――グルルル…ッ!

そう鳴いた。


俺は慌てて背負っていたハルカを石柱の隅に下ろし、ここで待つように告げる。

腰元から剣を抜いて、コンの元へと駆け寄った。


やはり…
動物であるはずの敵の「声」は、
分からなかった。


「…コン、どうなってる!」

剣を白い霧へと構える。