記憶 ―夢幻の森―


ハルカたちの過去を、
俺は知らない。

しかし、
あの里の人々の不審な態度から、その様子が簡単に想像出来てしまって…
苦しくなった。


『それまで知らなかった。…その時、初めて知った。俺が…ヤクビョウガミだった事。』

コンは当時を思い出して、鼻をすすり出した。


「…自分を、疫病神だなんて言うな。ハルカが悲しむぞ?」

俺の言葉に、そうだよな、とコンは小さく頷く。


『でも…、その後から苛めてたヤツラも、大人たちも、急によそよそしくなって。ハルカ、避けられるようになっちゃった…』

「コン…」


『俺のせいだ。俺の事が恐かったんだ、みんな!だからだ!』


確かに…
里で「本来の姿」で威嚇されれば、人々は危険だと思うのかもしれないな。

でも、それは…
コンの心を皆は知らないから。

中身は、
こんなにも良い子だって事。

泣き虫だって事。
優しくて素直な事。

ハルカを守ろうとしただけなんだって事。

皆は、知らないからだ。



――俺を、嫌いになったか?

そう先程、
コンは俺に聞いた。


「…おいで。」

俺は苦しくなって、
涙を堪えるコンを胸に抱き締めた。

力一杯、ぎゅっと…