記憶 ―夢幻の森―



ワゥン…
『…エマは寝たのかぁ?』

「…あぁ、そのようだな。」

軽く食事を済ませた後、エマは俺たちに丁寧に謝って仮眠を取ってもいいかと訪ねてきた。


見えない目に、不馴れな場所。

非常に気を張って道を進んで来たのだろう。
固い地面の上にもかかわらず、森の樹の幹に身を預け、すやすやと眠っていた。


『じゃぁ…これから俺が言うのも、男どーしのヒミツの話なッ?』

コンはエマにそろそろと忍び足で近付き、彼女が寝たのを確認するとそう鳴いた。

別に、起きていたところでコンの言葉はエマには分からないぞ?と思いながらも、


「あぁ。」

と目を細める。


コンは俺の膝の上に再び丸まると、


『…こうゆう事、前にも一回あったんだ…』

と静かに目を伏せた。

コンが何の事を指しているのか分からずに、俺は首を傾げた。



『…まだハルカも俺も小さい時、俺…一回だけ…、さっきみたいに怒っちゃったんだ…。』

「…そうか。何か理由があるんだろう?」

悲しそうに瞳を潤ますコンの頭を撫でる。


『…里の、ハルカと同じ年くらいのヤツラが、ハルカを囲んで苛めた…』

コンは悔しそうに顔をしかめた。