記憶 ―夢幻の森―


『あと…、ご飯の事も。男どーしのヒミツなぁ?キース。』

「…承知した。」


少し元気を取り戻したコンを、片手でくしゃくしゃと撫でる。

もう片方の手でカバンに手を入れると、
せっかく濡れていなかったカバンの中身も、コンの涙と鼻水で湿っていた。


「………。」

コンは、へへっと照れ笑いをしながら、お決まりのパターンで俺の服で「残り」を拭く。



「…コンちゃんは随分キース君になついてるのね?普通は…、主以外にはなかなか心を開かないのよ?犬竜って。」

ワンッ!
『だから、なついてねぇッ!』

そんなエマの言葉に、コンが俺の膝にちょこんと座りながら吠えた。


「……ほぅ?そうか。」

俺は意地悪くコンを見つめると、俺を見上げて高い声で鳴いた。


『…んな!?ちょっと…好きだけど、な…なついてなんかねぇぞ!』

「…分かった、分かった。」


エマはそんな俺たちの様子を微笑ましく見守り、


「やっぱり仲良しさんなのね?」

と笑う。


『むぅ。…エマは俺を撫でてくんねぇから、嫌いだぁ…』

ぼそっとコンは呟いた。