――グルルルッ…!!

黒い影は、その大きな翼をバサバサと羽ばたかせ、空へと昇る。

三匹の狼たちは、焦りの色を浮かべて吠えたてた。



「…コンちゃんの力が、解放されてしまった…。」

エマは、小瓶の露をハルカに塗る手を止め、見えない瞳を黒い影へと向けていた。


「…どういう…事だ…」


「…あれが、犬竜の…『本来の姿』なのよ…。」

あ…
あれが…


「――コン…」


コンは、怒りをあらわに叫ぶ。
口から大きな炎の渦を出し、上空から狼たちに降らせた。

一瞬の内に、
狼たちは騒がしく悲鳴をあげ、深い森へと消えていった。



――キュゥ…

コンはそう甲高い声をあげながら地へ着くと、大きな首を地面へとしならせて…

その大きな瞳から、

涙を、流していた。



「…犬竜の卵は、妖精にしか孵せない。孵した主の『魔法の力』を糧にして、その生命力を貰って生きるの…」

エマは、そう呟いた。


ハルカの「命の源」を削って、
コンが、生きている…?


「普段は、自然とハルカちゃんの背から漏れている生命力を糧にしているみたいだけれど…」

エマは、そう気を失うハルカに瞳を落とした。