――…ァウォォーーン!!
頭上から森に響く、聞き覚えのある声。
「――…!?」
動物の遠吠え…。
…コン…じゃない…。
あれは…
あの声は、狼!
「…ハルカ!!」
俺はその遠吠えを頼りに再び走り出していた。
近付く狼の複数の鳴き声と、
木々のざわめき。
そして…
それが近付く度に、俺の不安の闇は拡がる。
――…ガルル…
獲物を狙う狼たちが、右へ左へと牙を剥きながら一点を見つめていた。
ゥワンッ!ウゥー…!!
それに対峙する黒い小さな影が、姿勢を低くし、
血を流す小さな少女を懸命に守ろうとしている様が…
俺の視界に近付いていた。
「――コン!!ハルカ!」
俺は走りながら腰にあった剣を抜き、彼女たちに駆け寄る。
「……キー…ス…」
ハルカが自分の腕を押さえながら、弱々しく俺の名を呼んだ。
その手で押さえた腕からは、
赤い血が…、
止めどなく溢れ出していた。
この場にはエマも一緒に居り、血を流すハルカの肩を抱いて、コンの小さな体の影に隠れている。
「3人とも!下がってろッ!!」
俺は右手で剣を構え、左手を大きく振り合図を出す。