―大事な人―




走った。

いつも冷静で自分を見失わない俺が。

他のことはもうどうでも良くて。



ただ、美亜だけを想って走った。





行かないで。



消えないで。



俺の前から消えないで。




もうあんな想いはしたくない。


大事な人が自分のそばから去る寂しさと悲しみは痛いほど知ってるから。



母さんが俺の前から消えたように、美亜も俺の前から消えてしまうのか?




「ったく・・・・・・」



どこに行ったんだよ、美亜。






走り疲れて、しゃがみ込んだ。




見上げた空。


綺麗な夜空を見て、なんだか泣けた。





どこかでアイツもこの夜空を見てる。



そうだ。


俺と美亜は同じ寂しさを抱えて、同じものを探している。