そう答えると、美香は嬉しそうに笑った。


それからは、小さな体にたくさんの資料を抱えて動き回る美香の姿をよく見た。


資料室から資料を持ち出しては、パソコンに向かう。


「まだ居たの?」


別の部署との会議を終えた夜の9時に自分のディスクに戻ると、美香のディスクの明かりがまだついていた。


「はい。もう少しやっておこうと思って」


パタンとパソコンを閉じて、美香は俺に笑顔を向けた。


「順調?」


「はい」


やっぱり美香は、俺に笑顔を向ける。


「終電、乗り逃さないようにね」


「はい」


最初から最後まで、美香は一人でこの仕事をやり終えた。


誰にも頼らず、自分の力だけで。


その間も常に笑顔で、疲れた表情は一度も見せなかった。