「美香」


「んー?」


「仕事、辞めるか?」


「辞めたいけど、奨学金返さないといけないもん」


まだ働かないといけないよって小さく呟く。


「奨学金は、俺が返すって言ったら?」


「それは嬉しいけど、でもまだ8月までは新井さんの面倒見ないといけないし」


新井さんとは、美香が今見てる新人の女の子。


一度決めたことは、最後までやり通さないと気が済まないか。


「8月過ぎたら仕事辞めてさ」


「ん?」


「俺と結婚しよう」


きっと美香には、会社なんかの慌しい世界よりも、こうやって穏やかな時間を過ごしている方が似合ってる。


「ねえ、私の夢聞いてくれる?」


「なに?」