眠いけど、眠くない。 もうこのまま、何も聞かずに電話を切ってしまおうか、なんて甘ったるい考えが頭を過(ヨギ)る。 『……お前が初めてだったから。』 「何がですか?」 引っかかる事が何もない。 何かした? 『聞きたかったら今すぐ来い。』 それだけ言われ、ツーツーと電話が切れた音が流れる。 あたしは困惑しながらも着替えていた。 歩いて駅に向かった。 自転車という移動手段はあたしに存在しない。 …持っていないから。 週末だからか、こんな時間なのに人が昼間と同じくらいいる。