隣を通り抜けた女の人を見る。 その人の視線の先には、犬なんていなくて。 「ごめんね?待った?」 「いえ、全然。」 ………黒都がいる。 二人が駅からいなくなるまで、ずっと立ってみていた。 当たり前、と言えば当たり前。 今日は黒都の誕生日なわけだし。 祝いたいと思っている綺麗な大人の女の人は沢山いるわけで。 …あたしを待っているわけ無くて。 もし、体の中に心があるというならば、あたしの体の中はスカスカだ。 血も涙も、心臓さえもない。 元来た道を戻る。