秘密のアイドル~仮面カブリノオ姫様~下


「また、逃げんのかよ」


金属がぶつかる低い音。


匡が廊下のゴミ箱を蹴っ飛ばした音だった。



いつもすぐ物に当たって……


毎回その原因はアタシなんだけどさ。


中身のゴミが廊下に散らばった。

自販機の使い終えた紙コップ。






熱い瞳がアタシを見つめ続ける。




好き。



付き合って。




たったそれだけの言葉がアタシの口から出ない。




今のこのシアワセな生活を壊したくない―……


暗い暗い、暗黒時代の苦しさを居場所の無い辛さをアタシは知っている。



2度とそんな所行きたくない。



アタシの口から出る言葉は……




「……ごめん……」





いつも匡を傷つける。