「また、逃げんのかよ」
金属がぶつかる低い音。
匡が廊下のゴミ箱を蹴っ飛ばした音だった。
いつもすぐ物に当たって……
毎回その原因はアタシなんだけどさ。
中身のゴミが廊下に散らばった。
自販機の使い終えた紙コップ。
熱い瞳がアタシを見つめ続ける。
好き。
付き合って。
たったそれだけの言葉がアタシの口から出ない。
今のこのシアワセな生活を壊したくない―……
暗い暗い、暗黒時代の苦しさを居場所の無い辛さをアタシは知っている。
2度とそんな所行きたくない。
アタシの口から出る言葉は……
「……ごめん……」
いつも匡を傷つける。

