ただなんとなく。


「お姉ちゃんも病気?」


車椅子に乗った女の子。


乾燥肌なのか、
病気だからなのか、


瞼にクシャクシャなシワを寄せて笑った。


『あたし、病気に見える?』


ただなんとなく
立ち止まって、


「分かんない」


ただなんとなく
目を瞑ってみる、


「見た目だけじゃわかんない病気っていっぱいだよ。だって、心の病気だってあるじゃない?」


歳上のあたしより、何倍も大人びた笑顔。


『あんた大人だね。尊敬通り越して怖いよ』


ただなんとなく
背中押されるように、


「何で?お姉ちゃん、あたしより大きいでしょ?だから大人じゃない」


それは…、どうかな。


『確かに“大きいのは”ね。でもね…』


ただなんとなく
前を見るのが怖くて、


『体が成長したり歳だけとったりしても、大人とは言えないんだよ』


そう。


今の自分は大人とはとてつもなく掛け離れた、その辺の子供の遊びで作られた泥団子のようだ。


「あたし早く大人になりたいの」


ただなんとなく…


「この病院にいる人達、皆悲しい思いしてるから…」


汚い世界に安心した。