――好きだ。 この人のことが、好き。 単純にそう思った。 でも、まだこの気持ちは隠しておこう。 いつかきっと伝えるために、 まだ、胸に隠しておこう。 その代わりに今は、 笑って頷いておこう。 あなたを不安にさせないために。 私を不安に、させないために。 ドアが閉まる。 少しのため息と共に、 目を閉じれば思い出す 彼の体温に、呼吸。 「…好き…」 口に出して、楽になるかと思ったけど ただ再認識しただけだった。 自分の気持ちを。