耐え切れずに振り向く。 「あの…何か。」 倉田瑞季は真顔で、 「また倒れるんじゃないかって、心配で。」 と言う。 ――心配、されてる?私。 「ありがとう、ございます…」 なんでこの人はこんなふうに言ってのけちゃうんだろうか。 「ねぇねぇ、」 倉田瑞季は私の背中越しに聞く。 「何で音楽始めたの?」 「きっかけ、ですか?」 「うん。」 沸いたお湯をお茶の葉に注ぎ、 湯気が顔に広がる。 それはまるで過去のベールのように 目の前を塞いだ。 きっかけ…… 目を細めて考えた。