―14世紀 フランス―


―ユリウス歴1431年5月30日―

フランス ヴィエ・マルシェ広場



俺は今、大勢の人々の罵声の中に居る。


大勢の人々に囲まれ、俺は縄で手足を太い木の棒に縛られている。


俺が顔を見上げると、一つの高い塔の窓から。大きく大空に向かい手を、上げる人物が目に入った。


それは“合図”だった。


しかし、その合図とは、俺に向けた合図では無く。俺に火を点ける死刑執行人への合図。



“殺せ〜”


“異端者を殺せ”


“早く燃やしちまえ”



俺を囲む人々の群れから聴こえる罵声。


その人々の中には“果物を投げ付ける”者。


石を投げ付ける子供。


皿やコップ等も投げ付ける者も多く居た。


『いっっ痛てぇなぁ』

俺は、俺を囲む人々全員を睨みつけた。


すると、さっきの高い塔の人物は、その大きく上げた手を一気に下へ振り下ろした。