すると今度はロベールがこう切り出してきた。



『ロー君。君は今までに人を殺した事はあるか?』


『ああ…』


『では君は何故その人を殺した?』


『人を殺す事が快感だったか?』


『それとも、人の命を奪って優位な立場にでもなりたかったのか?』


『そうでなければ君は、ただ単に人を殺したかっただけなのか?』


『違うそうじゃない俺は人を殺したくて殺してた訳じゃない』


『俺はそうしないと…そうしないと逆に俺が殺されていたから』


『ではもう一度君に聞こう。』


『君の言う“俺は殺したくて殺してた訳じゃない”と言う意見の証拠は何処にある』


『んそれは…』


『君の言う“そうしないと逆に君が殺されていた”と言う証拠は何処にある』

『私や他の者達の前にあるのは“君が人を殺した”と言う事実しか無いんだよ』


『君が今まで殺して来た者達の亡きがらはその事実を示す証拠にしかなり得ない。』


『だから難しい。“事実”の証拠と言うのは見つけ出すのは簡単だ。』


『しかし、“真実”と言うものは証拠以前にその“真実を見付ける事自体”が難しい。中には偽りの真実すら浮かび上がる始末だ。』

『更に付け加えるなら、その事実と真実が全くの逆を行く事も少なくは無い。』

『君は今正に、その事実と真実の違いに気付き、罪無き国王を手に掛ける事を戸惑い、そして出来ずに居る。』


『そして真実を知った君は、今まで自分が見てきた事実と今聞いた真実との狭間で苦悩を強いられている。そうじゃ無いのか?』


『………』