聞かれて、綾野は答えに詰まる 大学生ではなく、人妻です、なんて言えない 「大学生・・・ではないかな」 「ふぅん・・・」 いろいろと聞きたくなったのだろうが、隆平はあえて深くは追求しなかった 日が落ち始めた頃、綾野は迎えに来た車に乗り込み、向かいの会社に目を向けた 「綾野さま。遥さまは、まだ仕事中なので・・・」 「わ、分かってます。さっさと帰りましょう」 座席に深く座り込んで、綾野は会社から目を逸らした