【短編】ウラハラ



よく考えたらこんなふうにゆっくり柏木さんと話すのは初めてだ。

ストーカーのような一方的に送られてくるメールの印象と違って、紳士で優しかった。

気のきかない私にサラダは取り分けてくれるし、飲み物がなくなったらすぐに聞いてくれる。

でもそれってやっぱり女の子と遊び慣れてるのかな。
楽しさを感じながらも複雑な気分で食事を終えた。



「ごちそうさまでした」

私は店の出口で丁寧に頭を下げた。

奢ってもらうなんて嫌だったので散々レジで言ったけど、じゃぁ今度は払ってもらうよ、と結局柏木さんが払ってしまった。

それにしても“今度”なんてあるの?
些細な言葉に胸が高鳴る。

いやいや、二度目はないでしょ。

社交辞令だよね。


「帰ろうか」


柏木さんの言葉で車に乗り込む。