無言で先生の腕を掴んだまま、あたしの部屋へと到着した。


逃げられないように、ドアの前に立つあたしと、向かい合うように立つ先生。


その距離は、少し離れていた。




「先生、なんであたしの顔を見てくれないんですか?」



「いつも通りだ。お前の顔なんて、見てない」



「嘘つかないでください……!最近の先生は、あたしの顔を少しずつ見てくれてました!」



「……お前に、俺の何が分かる!?」




先生が、数時間ぶりにあたしの顔を直視してくれる。


……だけど、その顔に“表情”はなかった。


零れそうな涙をグッと堪えながら、あたしも先生の目をジッと見つめる。




「分かりますよ!

……あたしは、池谷くんじゃなくて、先生が好きなんですもん!!」




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