俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~




「もう!お父さんもお母さんも大好きなんだから!」




そう叫びながら、ふたりに抱き付きたい衝動に駆られるけど、今は食事中なので、気持ちを押し込む。


もちろん、一番抱き付きたいのは、先生なんだけどね!




「やっぱり柚は、前向きじゃなきゃな」



「うん!勉強頑張るね、お父さん!」




やる気が出てきたところで、どこからか、椅子がガタッと音を立てた。


音のした方に視線を向けると、そこには、空になった食器を持った、先生の姿が。




「あら朔夜くん。もうお部屋に戻るの?」



「はい、ご馳走さまでした。今からお風呂に入って、今日はもう休もうと思います」




そうお母さんに告げた先生は、あたしにも目をくれず、そそくさと部屋を出て行ってしまった。


最近、あまり先生と話せていなかったあたしにとっては、頑張れっていう言葉をくれれば、それだけでやる気100倍なのに。


見向きもしなかった先生の姿に、少しだけ、気分が沈んだ。




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