俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~




「ただいま……」




疲れ果てた声で玄関のドアを開けると、あたしの帰宅を知ったお母さんが、玄関へと駆け寄ってきた。


顔から血の気が引いているあたしを見て、驚いた表情を浮かべている。




「ゆ、柚!大丈夫!?」



「大丈夫。慣れないお勉強というヤツをしてきただけだから。あたしのほうこそ、帰り遅くなって、晩ご飯作れなくてごめんね?」



「お母さんのことなら気にしなくていいから!とりあえず、晩ご飯食べて?お父さんと朔夜くんも食べてる途中だから!」




お母さんに心配されながら、玄関に置いてあったあたし専用のスリッパに履き替える。


“朔夜くん”という単語を聞いても、胸がドキドキする余裕がない。


いつものあたしじゃないなあ。先生のことを考える元気すらないなんて。


それくらいに、あたしは心の底から疲れ果てていた。



あの、池谷くんのせいで。




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