俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~




そう決心してから、お母さんが忙しそうに家に顔を出したのは、晩ご飯を作り終わってすぐのことだった。




「柚!ご飯作り終わった?」



「お母さん、豚の生姜焼き作ったよ!」




お母さんの顔を見るとなんだか安心するな、と思いながら返事をすると、なんだか申し訳なさそうな表情を浮かべていた。




「ごめんね、柚。今、重病の患者さんの処置に追われてて、せっかく作ってもらったのに、温かいご飯食べられそうにないの」




うちの診療所は、今みたいに、決まった時間にご飯を食べられないこともしばしば。


だけど、それが医療の現場っていうもの。


ひとりひとりの命を預かっている、大切なかけがえのないお仕事。


そんな現場で仕事をしている、お父さんとお母さん、先生は、本当に尊敬できる。


あたしは両親が素晴らしい仕事に携わっていることに、少し誇らしく思いながら、お母さんに笑顔を向けた。




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