俺をオトしてみろよ。~愛しのドクターさま~




「ただいまーっ…」




そう声をかけるも、家中シーンと静まり返ったまま、誰の返事も聞こえない。


まあ、お父さんもお母さんも先生も診療時間真っ最中だから、当然のことなんだけど。


お昼休みの絵梨にゃんの破天荒な作戦を耳にしてから、午後の授業なんて集中出来るハズもなく。


あたしの頭の中には、憂鬱な気持ちが広がったまま、こうして自宅に帰ってきてしまった。


―――確かに、あたしは先生のことを好きになっちゃったし、アタックするって宣言したけども!


元々、突っ走ることしか知らないあたしには、そんな行動に踏み切る勇気もないし。


大体、あんなにクールで冷たい先生が、お色気作戦なんかに引っかかるわけもないし。




「とりあえず、ご飯作ろーっと…」




憂鬱でモヤモヤした考えを振り切るように、あたしはエプロンを手に取り、今日も料理本を見ながら、四人分の晩ご飯を作るのであった。


…やっぱり、一緒にお風呂なんて絶対に無理!


あたしらしくないけど、絵梨にゃんには正直に出来ません、って言おう。


そう考えを変えると、少しだけ心のモヤモヤが無くなった気がした。




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