水樹さんは、湯気の立っているコーヒーをあたしの向かいの席において、ゆっくりと味わって飲みだした。
きっと、コーヒーはブラックかな?なんだかんだで、水樹さんも大人だなあ。
「この間ね、朔夜がここに来たんだ」
急に、“朔夜”という単語があたしの頭を掠めていく。
何も言葉を返せないまま、あたしは口に入れていたパスタを静かに飲み込んでいた。
「確か“柚ちゃんが明日からテストなんだ”って言ってた気がする。なんだかんだで柚ちゃんには甘いよね、朔夜は」
――お守りをくれた、あの日。
確かにあの日の先生は、お守りをくれた後、どこかに出掛けていた。
水樹さんのところに行ってたのかあ。
でも。
「先生、あたしのことなんてそういう対象に見てないですよ。だから、あたしに甘いなんて嘘だと思います」
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